音楽制作は人間的だ

プロが制作する音楽

2019年11月01日 10時13分

知識と経験の蓄積、創造力が違いを生む

プロが制作する音楽は、圧倒的な知識と経験から生まれます。ひとくちに音楽を制作するといっても、それほどシンプルな話ではありません。そこには数々のステップが存在し、ひとつひとつのステップは、どれも省くことのできない重要なものです。
 

 音楽制作は作曲から始まる

ビジネス用途で音楽制作を依頼する場合、音楽を制作する側は、依頼者の会社のイメージ、ビジネスの内容、伝えたいメッセージなどの要素を参考にして、まずは音のアイデアを絞り出します。ここでも経験や知識は必要ですが、それよりも創造性(クリエイティビティー)が求められる仕事です。
 
音のアイデアを絞り出した後は、欲しい音を頭の中に焼き付けます。焼き付けるといっても、経験のある作曲家なら、自然と身についている作業です。しかし、この「欲しい音」は、音楽が完成するまで変わってはいけません。この「欲しい音」が何かの理由で変わってしまったのなら、音楽制作のプロセスは最初からやり直しです。
 
どんなレコーディングでも、スタートは常にアイデアを絞り出すことです。時にはひらめきから実際の作曲が始まります。欲しい音をイメージしながら、そして、どうしたらメッセージはより伝わるのかを考えながら、作曲作業は続きます。

 

 作曲の方法

 
メロディーから入る

作曲の方法はいろいろありますが、プロの作曲家にはそれぞれスタイルがありますので、一概にこれがベストという方法はありません。CMソングを作曲する場合は、キャッチーなメロディーが重要視されることが多いと思います。そういった場合は、「メロディー」作りから作曲に入ることがおおいかもしれません。メロディーが先にできあがり、そこにコードを割り当てていくスタイルです。
 
 コード進行
「コード」から曲作りに入る。おそらくもっとも一般的な方法です。音楽には「勝利の方程式」ではありませんが、似たような型があります。多くの曲でバックを固める「コード進行」は、方程式のような型が決まっています。ストックされている「コード進行」から音楽を組み立てていくスタイルですね。
 
 フリープレー
特にひらめきから作曲に入る場合、ギターやピアノをフリーでプレーしながら、曲を組み立てていく作曲家も多いと思います。フリープレーから生まれる音楽は、創造性のあふれる、刺激的なものになりそうですね。
 
 アレンジング
アレンジングは、さまざまな既存の音楽を参考にして、楽曲を仕上げる方法です。このプロセスでは、まず既存の音楽を分析し、楽器のパートを書き換えて、仕上げます。同じ曲と言えば同じ曲ですが、演奏するバンドの楽器構成は変わります。
 

 音楽制作・デモは完成形をイメージする

ために制作する作曲が終わるとデモのレコーディングに移ります。デモは、その音源の制作に参加するミュージシャンやエンジニアが、同じ目標へと向かうための指針です。全員が同じイメージを共有することで、仕事を進めていきます。作曲とデモのレコーディングは、しばしば同時進行で行われます。これは作曲家が「ひらめいた」時などに行われることが多いかもしれません。
 

 レコーディングのための重要ステップ・リハーサル

リハーサルは、できあがったデモを基に、ミュージシャンやエンジニアが、曲の全体像をつかみ、全員が同じ方向を向いているか確認する場です。また、リハーサルをしてみて初めて分かる曲中の問題点などが洗い出される場となります。リハーサルは次の段階であるレコーディングへの準備です。
 

 レコーディングはリズムを先に

レコーディングは、具体的には2段階で行われます。最初に、曲の根幹となるドラムやベースといったリズム系楽器の録音(ベーシックトラック)をし、その後にボーカルやギター、キーボードなどの音声を被せていきます(オーバーダビング)。
 

 ミキシングは音楽を調理すること

ミキシングは、音楽に息吹を与える作業です。マルチトラックレコーディングされた音楽は、この段階では、ただの音声といってもいいほどのものです。そのままでも食べられますが、味も素っ気もない食材のようなものです。
 
ミキシング最大のテーマは、この味も素っ気もない食材を、おいしく調理することです。

 
 各トラックのボリューム調整
トーンの調整
雑音の補正 


をまず行います。これは調理で言えば下ごしらえのようなものです。トラック間のバランスは、レコーディングが終わった段階ではまったくバラバラで、とても音楽とは言えない状態です。ミキサーに備えられているイコライザーを使って、上記のような作業を繰り返します。ただ、まだこの段階では細かな音色の調整はしません。あくまでもバランス取りです。
 
バランス取りが終わったら、本格的な音作りに入ります。経験と知識が要求される作業です。この作業は楽しくもありますが、大きなプレッシャーもかかります。「欲しい音」を見つけるまでには、ある程度の時間がかかりますが、妥協の許されない仕事となります。リバーブやコンプレッサーなどのエフェクトもミキシングのプロセスでかけていきます。ミキシングの終わりは、料理で言えば、調理が終わった段階でしょうか。

 

 マスタリングは音楽を盛り付けること

マスタリングは、CDやレコードなどの音源として仕上げる作業です。ミキシングが終了した時点で、曲単体としては完成しています。しかし、たとえばいくつかの曲が収録される場合、すべての曲がひとつの音源としてまとまっていなければなりません。すべての曲のレベル、曲間の長さの調整などを行うのがマスタリングです。これが音楽制作のプロセスです。ここまでくれば盛り付け完了、音楽がおいしく聴ける状態に仕上がりました。
 

 プロはさまざまな音楽を作っている

プロが制作を手がける音楽は、コマーシャル用や企業PRのためのBGMだけではありません。ドラマの音楽や学校の校歌まで、想像以上にいろいろな音楽作りに携わっています。
 
日本でも多くの会社が、音楽制作を行っています。顧客の要望を基に、どのような音楽が目的を達成するために必要なのか、過去の経験と創造力でアイデアを提供してくれます。
 
中には海外の有名音楽プロダクションや作曲家とのコネクションを持つ会社もあり、映画音楽を担当した有名プロデューサーに仕事を依頼することも夢ではありません。世界的にも知られるアーティストと仕事を重ねている会社もあり、日本の音楽制作現場でも最先端のノウハウを用いた音楽制作が行われています。

 

 音楽制作・プロがプロである理由

音楽制作において、まず必要なのは創造力(クリエイティビティー)でしょう。経験と知識はもちろん欠かせませんが、創造力無しにすばらしい音楽を作り出すことは考えられません。ただ、プロ中のプロには、そうである理由が、他にもあります。その多くはメンタルに関することです。プロ中のプロであるための精神力。私たち、それぞれが生きる世界にも必ず役立ちます。